#アレルギーをもつ子も食べられるお菓子 #ビーガン・スィーツ #フォトジェニック #美味しすぎてビーガンを忘れる #ビーガン・パティシエ
息子さんが卵と牛乳のアレルギーをもっていることから、手作りでスィーツを作り始めたという長谷川理恵さん。生来の研究熱心な性格が、マクロビとロースィーツ、二人のすごい先生を引き寄せて、猛勉強でプロ並みの腕前に。やがて、アラン・デュカス、アジアマネージャーであるジャン・フィリップ氏に指名されてビーガン・パティシエとしてデビューするまでになりました。
マクロビのスィーツなのにスポンジがふわふわ!これだと思った
モデルとして活躍する一方で、これまでもマラソンや野菜ソムリエ、ワビヨガなど様々なジャンルにチャレンジし、様々な功績を残してきた長谷川理恵さん。今回、ビーガン・パティシエとしてデビューすることになったきっかけは、息子さんが卵と乳製品のアレルギーだったことだそう。
「息子は豆乳もあまり好まないので、甘酒でお菓子を作ったりしていました。あるとき、鎌倉ですごいマクロビのスィーツを作っている先生がいると聞いて、その先生の苺のショートケーキを食べさせたら、美味しい!と、ペロッと食べてしまったのです。私も食べてみると、マクロビのケーキってごわっとしているのが多いのですが、それはスポンジもふわふわで。息子もこんなに喜んでくれるなら、これを作りたいと、レッスンをお願いしました」
ところが、その先生とは、チャヤ・マクロビのトップ・パティシエだった岡田春生先生。岡田先生は、今はレッスンはしていなかったので、理恵さんは、3回会って3回とも断られてしまいました。
「でも、言い方が優しくていらしたので、私は断られていると気付かず(笑)。
先生の昔の本を見つけたりして、それでもお願いしているうちに、プライベートレッスンをお願いできることになったのです」
理恵さんはやると決めたらやりぬく性格。岡田先生も「やるからには魂を入れてやってください」と、おっしゃったそうです。
レシピ的には正反対のマクロビとローの両方を学んで
一方で、理恵さんは、ロー・スィーツにも興味をもっていました。
「ロー・スィーツのMii先生という、すごい方がいらっしゃるという情報も入ってきたのです。Mii先生のスィーツは見た目がすごく美しいので、実は前から本ももっていて」
ただ、マクロビとローはレシピ的に正反対の要素をもっていたのです。
「マクロビはなんでも火を通す。ローは食材の酵素を壊さないよう、火は通さない。その点においては正反対なのです。でも、卵と乳製品にアレルギーをもつ息子の立場に立って考えると、見た目が美味しくてきれいな二つのレシピが合わさったらとてもうれしいことになる。これをひとつにできないかと思うようになりました」
しかし、両方の先生方が対立するきっかけになってしまったら大変なことです。
理恵さんはゆっくりと「ローケーキに、焼いたマクロビのクッキーを飾ってもいいですか」といったことを提案しながら、お二人の先生を立てた折衷案をつくっていきました。
「ロー・スィーツは、クラスト(台の部分)をナッツで作らないといけないのですが、大抵の人がマクロビのスポンジケーキのほうが美味しいと感じます。でも、ロー・スィーツのクリームは美味しいものが多い。そのうち、マクロビの先生も『このローのカシューナッツのクリーム、美味しいね』と言ってくださるようになって。何より、息子は罪悪感なく食べてくれる。両方を折衷したスィーツは、血糖値の上昇も緩やかなので、糖尿病予備軍の方にもおすすめです。二人の先生は超一流。今、表立ってそのお二人のレシピをくっつけたのは私ですが、レシピは先生方のものでもあるし、チームとして世界にもっていきたいと思っています」
こうして「理恵流ビーガン・スィーツ」が生まれることになりました。
アラン・デュカス・チームのジャン・フィリップとの出会い
理恵さんのビーガン・スィーツはあっという間にプロも顔負けのものになっていきました。インスタグラムに上がっている彼女のスィーツは、見た目も本当に美しく、なんとも美味しそう。
そんな折、今度は鎌倉でアラン・デュカス・チームのジャン・フィリップと出会うことに。
「9月に開催された『フランス・レストラン・ウィーク』のキックオフイベントで、パティシエを探していて『やってみませんか』と言われたのです。ホテルリッツパリでメインマクロビシェフだったNorrico氏のコース料理のデザートを担当して欲しいと。私はモデルの仕事で緊張したことがないのに、ヤバいヤバい、と本当に緊張して作りました」
理恵さんのスィーツは大好評。その後、パリへ2泊4日の向学の旅にも出ました。
「ホテル ル ムーリスのキッチンを見学させてもらったり、アラン・デュカス・チームおすすめのスィーツのブティックを20件くらい回ったり。ビーガン・スィーツをさらに美しく作る技を取得したいですね。リッツにはパティスリー学校もあるので、いつか子どもを連れて1週間くらい勉強に行くのもいいなと思っています。一流の先生たちに教えてもらってありがたいですね」。
自分のライフスタイルに合わせて、いいものを取り入れるという気持ちで
理恵さんが作るスィーツを一番最初に試食するのは息子さん。
「スィートポテトを作ったら『なんか別の野菜が入ってる?しゃりしゃりするよ』と言われたり、味覚が鋭いんですよ(笑)。あ、もっとなめらかなほうがいいな、と反省したり。でも、息子はビーガンのショートケーキが大好きになったことから『普通のクリームも食べられるかも』と、バニラアイスクリームくらいは食べられるようにもなりました。そんなふうに息子が喜んでくれること、成長してくれることが何よりうれしいです。その気持ちが最初だったし、これからも基本にしていたいと思います」
もちろん、彼女のスィーツは、周囲の大人たちにも好評です。
「マクロビ、ローなど、ひとつに固執するのではなく、自分のライフスタイルに合わせて、いいものを取り入れる、というのがいいよね、というのが、私の周りの人たちの共通した意見。お酒が好きな人には、お酒に合わせたスィーツがあってもいいし。ただ、食べ過ぎたら誰だって太りますよ。ダイエットが第一の目的じゃなくて、すごくきれいでやさしい味のものを食べたら幸せになるということをまず大事にしましょう。これから、そういうものが本当に求められていくと思います」。